ベビーマッサージと母親のストレス値の変化

~香音のベビーマッサージ教室を対象にした大学院の研究結果~ 


論文「母親に対するベビーマッサージの心理的効果」 

広島文教女子大学大学院 人間科学研究科 教育学専攻 臨床心理学コース 魚谷裕子氏
調査期間 2015年9月~10月


〈目的〉
母子相互作用促進の効果が期待されるベビーマッサージを行うことで、母親にどのような心理的影響があるかを1か月の継続的データを用いて検討する。


〈対象者〉
ベビーマッサージ教室に参加した52名(児の月齢は2か月以上12か月未満)


〈生理的指標〉
 唾液に含まれるアミラーゼを測定し、ストレス強度を測定。


〈心理的指標〉
 ストレス過程で引き起こされる主要な心理的ストレス反応を測定することを目的に、(略)開発された尺度である。日常生活の中で経験される心理的変化に関する項目群で、「抑うつ・不安」「不機嫌・怒り」「無気力」の3因子、各因子6項目の計18項目で構成されている。「全く違う(1点)~そのとおりである(4点)」の4段階で回答を求めた。
 


〈結果①〉
 生理的指標によるベビーマッサージのストレス軽減効果
ベビーマッサージ教室において行ったマッサージ前後での母親のストレス軽減効果を見るために、それぞれの唾液アミラーゼ値の平均を算出した。(略)すなわち、ベビーマッサージ前に比べてベビーマッサージ後の方の唾液アミラーゼ値が有意に低下し、ストレスが軽減されたことが示された。
 
  〇ベビーマッサージ前後における唾液アミラーゼ値の変化
 測定項目 |   唾液アミラーゼ
マッサージ前(平均)… 19.500→→→→→マッサージ後(平均)… 13.136

 
 
〈結果②〉
心理的指標の因子分析結果
全対象における3つの心理的指標の1か月の継続的変化をまとめた。(略)「無気力」「抑うつ」「イライラ感」いずれもベビーマッサージ後の得点が有意に低下した。以上から、べビーマッサージが母親の心理的ストレス軽減に有効であることを示唆しているといえよう。(略)
このことから、べビーマッサージは母親の母親としての生きがいを高め…(略)ることが示唆された。



〈総合考察〉
本研究の結果から、べビーマッサージを行った直後には、母親のストレスは一時的に低下することが明らかになった。これは、母親がべビーマッサージを通して児に向き合い、児からの反応を受けて、触れ合うことにより、母親自身が癒されるなどの母子相互作用によるものと考えられる。
また、べビーマッサージが母子相互作用を促進し、愛着形成の一助になるとも考えられる。実際に実験協力者から「育児についてこだわりがあったが、気にならなくなった」「前向きになった」などの感想があった。(略)

最後に、1か月間で子育て中の母親のストレスが有意に低下し、母親としての生きがいは有意に増加することが示された。副次的な結果ではあるが、1か月間にわが子との様々な関わりを通して母親としての自信や成長を遂げている姿が垣間見られる結果と言えよう。